电子小吃!

电子小吃! (2020) "Dianzi-Xiaochi!" for vibraphone

 「电子小吃!」(2020)は、梅本佑利によって作曲されたヴィブラフォンと小鑼(中国の小さな銅鑼)のための作品である。

 中国語では、ヴィブラフォンを「電」という漢字を含む「电颤琴」(電顫琴)と表記するそうである。そこで作者は、「ヴィブラフォンも一種の電子楽器と捉えられなくは無いか?」と発想した。

 この作品では、日本のYMO(イエローマジックオーケストラ)が表出したような、「欧米から見た大雑把な異国としてのアジア像」とオリエンタリズム、そして「ピコピコサウンド」から連想されるような「テクノロジーの国、日本」を一括りにした世界観の表現がちりばめられている。

 主題的に用いられるペンタトニックスケールによる連続4度のメロディは、古くはロマン派の時代の音楽から、そして一昔前のアメリカのテレビ番組で度々用いられる「中国風のあのメロディ」である。中国人や日本人が、ドラの音とともに登場するときの、お決まりの音楽だ。 こういった東アジアの扱われ方は不愉快で奇妙でもあるが、日本のテレビでも、中国人や中華料理の登場時によく使われるモチーフだ。

 要するに、この作品は(題名や楽想からよく誤解されるだろうが)中国を題材としているわけではない。ステレオタイプ的な「欧米から見た日本」、そして、「ピコピコサウンド」に着想を得ているのである。